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抗菌薬適正使用について、毎日新聞に院長インタビューが掲載されました

2020.04.03

賢い選択:価値の低い医療/中 
「抗菌薬セファロスポリン 専門家「使用控えて」」
2018年5月3日 (木)配信毎日新聞社
https://mainichi.jp/articles/20180502/ddm/016/040/006000c

 

耐性菌の原因 「乱発」に警鐘

 多くの種類の細菌に幅広く効く「広域抗菌薬」として知られる第3世代セファロスポリン薬は、服用の仕方を間違えると健康を損ねたりするため注意が必要だ。過剰に使えば耐性菌の出現を招くため、専門家は使用を控えるよう訴えている。【渡辺諒】

 近畿地方に暮らす女性(85)は、半年ほど右手人さし指の腫れに悩まされていた。受診した整形外科で「細菌感染による関節炎の疑いがある」と診断され、飲み薬の第3世代セファロスポリン薬が出された。10日間飲んだが、腫れが引かないばかりか、食欲の低下や下痢の症状も。別のクリニックで診てもらった時には既に意識障害が生じ、血圧も低下したため病院に運ばれたが、翌日死亡した。

 原因は、健常者の腸内にわずかにいるクロストリジウム・ディフィシル菌。抗菌薬で腸内細菌が減る一方、耐性を持ったこの菌が増えて腸炎に伴う下痢や発熱を引き起こす。時に命の危険すらあるという。やわらぎクリニック(奈良県三郷町)の北和也副院長は「飲み薬の第3世代セファロスポリンは吸収が悪いことに加え、不必要なまで多くの菌に効いてしまう。使用するデメリットが大きく、他にもっといい治療法が常にあるため、原則使ってはならない」と解説する。

 セファロスポリン薬は抗菌薬の一種。世代が増えるごとに、効き目のある細菌の種類が増えていく。特に「第3世代」はより多くの種類の細菌に効果を示すことで知られる「広域抗菌薬」だ。欧州疾病予防管理センター(ECDC)などによると、日本は成人1000人が1日に使う抗菌薬の全体量のうち、セファロスポリン薬が3割を占め、世界で使用率が非常に高い。

 風邪の多くは抗菌薬の効かないウイルスが原因。東京都立小児総合医療センター感染症科の堀越裕歩医長は「『風邪には抗菌薬』という教えを受けた医師は多く、中でも第3世代セファロスポリン薬の使い方は異常だ。患者が治ったという誤った成功体験が積み重なり、疑問を持たなくなったのではないか」と推測。耐性菌問題に詳しい国立成育医療研究センター感染症科の宮入烈医長も「日本は感染症教育の歴史がまだ浅い。感染症の専門医が少ないことも一因かもしれない」と指摘する。

 日本での「乱発」とも言える第3世代セファロスポリン薬の使い方に、感染症の専門家らは警鐘を鳴らす。日本感染症教育研究会(IDATEN)は昨年、感染症に関する過剰な医療行為などをまとめた「Choosing Wisely(賢い選択)」を発表。「薬を出す際、そもそも必要なのか、最初に選ぶべき薬なのか熟慮し、安易に出すことは避ける」よう求めた。政府がまとめた薬剤耐性(AMR)対策アクションプランでも、2020年までにセファロスポリン薬など、広域抗菌薬の使用量を13年の水準から半減するよう掲げている。

 なぜ第3世代セファロスポリン薬の自粛が必要なのか。一つは薬剤耐性菌の問題がある。多くの細菌に効く抗菌薬を使うほど、多くの耐性菌が出現しやすい。免疫力の落ちた高齢者や患者の感染症治療を難しくするだけでなく、国境を越えて耐性菌が拡散する恐れもあるため、世界保健機関(WHO)は11年に警告を発表。耐性菌で経済にも損害が生じるとの指摘もあり、米国の試算では、対策を取らなかった場合、50年までに損害は100兆ドル(約1京円)にも達するという。

 もう一つは、健康へのリスクだ。第3世代セファロスポリン薬は幅広く効くため、下痢などの副作用が起こる可能性がある。体力のない高齢者は死亡するかもしれない。乳幼児が使うとアレルギー性疾患の発症リスクになるという疫学調査も国内外にある。

 北副院長は「日本は効果の乏しいこの薬を世界で一番多く使っている。習慣を見直さず使い続けることで、耐性菌の出現にもつながる。患者と医師が一丸となって対策に取り組まなければ、耐性菌だらけの未来が待っている」と危惧する。

 

処方減らす取り組みも

 一方、第3世代セファロスポリン薬の使用を減らす取り組みも広がりつつある。

 前橋赤十字病院(592病床)では14年ごろ、第3世代セファロスポリン薬に耐性のある大腸菌が年3%の割合で増えた。「不必要に薬を出していた」と強い危機感を持った病院関係者は、16年11月までに飲み薬の第3世代セファロスポリンを原則処方できないようルール化した。すると、12年には4323件出ていた第3世代セファロスポリン薬が、17年には35件と大幅に減った。

 第3世代セファロスポリン薬を「不可」にしただけでない。患者のたんなどを採取し、細菌の有無や種類を3分ほどの時間で判別できる「グラム染色」を取り入れ、患者がどんな細菌を持っているか検査している。同病院薬剤師の矢島秀明薬事管理課長は「細菌に効く抗菌薬を正しく選ぶことができ、多種類の細菌に効果をもたらす広域抗菌薬をあえて使う必要もない。グラム染色は安く、細菌の見分け方さえ覚えれば導入は難しくない」と説明する。地域の病院に対策法などの発信も検討している。

 昨年度、第3世代セファロスポリン薬が必要な患者は小児科で1人だけだった。林俊誠・同病院副部長(感染症内科)は「耐性菌は地域全体の問題。他の病院や診療所との連携など総合的な取り組みが欠かせない」と強調する。

 規模の小さな地域のクリニックでは、依然として広域抗菌薬が多く出されているとみられるが、東京都町田市医師会の会長を務める林泉彦(もとひこ)医師は、自身の小児科クリニックで抗菌薬の処方を大幅に減らした。「かつては多く出していたが、小児科関連の学会で適正使用への取り組みが始まり、10年以上前から減らすよう心がけた。子どもの症状を見極め、必要な時だけ薬を出す方がより効果が大きい」と実感。多くの風邪や中耳炎は抗菌薬を使わずとも、最小限の投薬や鼻水の吸引などのケアで完治できるという。

 林泉彦医師は「医師会主催の学術研修会を開催するなど、適正使用に向けた意識改革を始めている。薬剤師会などとも連携しながら継続して取り組むべき課題だ」と話した。

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 <国内で使用されている主な第3世代セファロスポリン薬の商品名>

 バナン、セフゾン、メイアクト、フロモックス、トミロン、セフスパン

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